大河ドラマ義経の原作宮尾登美子の「義経」

出たついでに本屋で宮尾登美子義経をチェック。一の谷合戦は鵯越を逆落としして一の谷の平家陣を攻めたとしている。地理を全く知らずに書いたことを暴露するもので、平家物語の作者と同じ過ちを犯している。また、この作戦に参加した兵力を三千としているが、これも鵯越の地勢を知らないことを示すもの。あそこは三千の兵を展開する余地などない。道も狭くて一列縦隊で進むしかない所。いくら小説と言っても酷すぎる。
屋島攻撃のくだりは平家物語をそのまま使っている。平家主力が留守であることを、阿波に上陸して始めて知ったとしている。冗談もいい加減にして欲しい。河野・熊野が同日に屋島に到着していることには全然触れていない。この事実を読み解かねば屋島合戦の真実を理解することは不可能である。
また義経は背後から奇襲するのが得意と言う。屋島は陸に向かう南側が正面ではないのか。大軍で攻めるための兵力を展開するのは、陸地でなければできない。こう考えると、義経は正面から攻めたことになる。海城は別として海側を正面とする城の例を知らない。義経の戦法は、敵の弱点を衝いて、中枢を一気に潰すことにある。近代戦に通じる非常に合理的な戦法で、時代離れしている。信長も同じ。