朝青龍と琴欧州の差

二人の差の第一は「心技体」の「心」であり、第二は「技」である。スポーツニュースで優勝決定戦を見直すと、立った瞬間に朝青龍の左手が琴欧州の肩を押し、琴欧州の体が右に開いてしまった。この時琴欧州の長い腕をもってしても相手のまわしに全く届かなかった。出足を止められては朝青龍の素早い動きに対抗できる者は居ない。この瞬間に勝負は事実上決まった。立会いの踏み込みの鋭さの違いである。
琴欧州にとって惜しまれるのは、１４日目の稀勢の里との一番でガチガチになってしまい、立会いに踏み込めず惨敗したことである。この一番でいつもの通りの相撲を取っていれば、千代大海戦や栃東戦同様に勝てたであろう。そうなっていれば朝青龍の追撃も及ばず琴欧州は優勝した筈である。その前日の朝青龍戦でもバタバタしていた。これは心の問題である。かって双葉山が三敗した場所の後、精神修養が出来ていないと言って、滝に打たれて修行したことがある。琴欧州も常に平常心で立ち向かえるよう精神面の飛躍を遂げれば、優勝は向こうから転がり込んで来る筈だ。今場所は優勝の栄冠をかちとるために乗り越えねばならぬ天の与えた試練であった。