北朝鮮に対する国連の動きから我が国の在り様を考える

最近の各紙は北朝鮮による拉致問題に対する国連の動きを、次のように報じている。

国連、北朝鮮に横田さん「死亡」根拠要求 総会で審議へ
国連は27日、北朝鮮の人権状況に関する最新の報告書を発表し、北朝鮮側が生存している拉致被害者の帰国を求める日本の主張に迅速に回答するとともに、「死亡」としている横田めぐみさんら安否不明者について「信頼できる客観的根拠」を示すよう勧告した。報告書は、開会中の第60回国連総会に提出されており、10月3日から始まる総会第三委員会(人権)で初めて本格的に審議される。(産経Web)

国連人権委:「国家機関の拉致」禁止、条約草案まとめる
ジュネーブ大木俊治】国家機関による拉致行為などの禁止をうたった「すべての人を強制的失踪から保護するための条約」の草案が23日、国連人権委員会の作業部会で固まった。来年5月の国連人権委員会で審議したうえで来秋の国連総会で採択を目指す。成立すれば、北朝鮮による日本人拉致など、国家機関が個人を秘密裏に拘束することを禁止する初めての国際条約となる。(毎日新聞 2005年9月25日 3時00分

だが北朝鮮は拉致は解決済みとの態度を崩していない。

拉致「解決済み」を強調 北朝鮮の前日朝交渉大使
北朝鮮の日朝交渉大使を務め、現在は「朝・日交流協会」常任顧問の鄭泰和(チョン・テファ)氏は23日午後、平壌市内で日本の複数の報道機関の取材に応じた。拉致問題については「すでに解決した」と従来の立場を繰り返し、「横田めぐみ(さん)の遺骨を我々に返す問題以外は論議しない」とも述べた。
asahi.comニュース特集 2005年09月23日)

北朝鮮の非道は明白にも関わらず国連も当てにならない。

【国連再考】(2)第1部(2)聖なる神殿 拉致事件で知る各国の独善 (日本財団図書館・私はこう考える)
(略)
国連人権委員会はこの四月、ジュネーブでの会議で北朝鮮の人権弾圧を非難する決議案を審議した。決議案は日本人拉致事件の解決をもうたっていた。欧州連合EU)の提案だった。北朝鮮の人権弾圧はあまりに明白であり、日本人拉致も北朝鮮首脳が認めている。国連の人権委員会が人権擁護という普遍的な立場からその北朝鮮を非難することは自明にみえた。
ところが委員会加盟の五十三カ国のうち賛成したのは半分ほどの二十八カ国にすぎなかった。中国、ロシア、ベトナムキューバ、マレーシアなど十カ国が反対票を投じていた。インド、パキスタン、タイなど十四カ国が棄権し、韓国の代表は投票のためのボタンを押さず、欠席とみなされた。日本国民の胸を刺す自国民の過酷な拉致という非人道行為を非難することにさえ賛成しない国が多数、存在する現実は年来の日本の国連信仰とはあまりにかけ離れていた。
(略)

これらをどう考えるか、関連することが多く、それらが重要な課題ばかりなので一口に纏めることは難しい。最後の引用文の「日本の国連信仰とはあまりにもかけ離れていた。」と言う一語は、誠に皮肉であり意味深である。日本と言う国家を、他国の善意を信じて運営して良いのか、そのような国家行動が可能なのか。これ一つとっても憲法改正問題と直結する。我が国は拉致という国家犯罪に対する当然の批判についても反対したり欠席したりする国と対峙して行かねばならない。その一方で最後に残った戦後体制の清算が静かにだが確実に進行している。アメリカは米軍の韓国からの撤収や、在日米軍の削減も匂わせているが、これは日本にとって自主防衛に踏み切らねばならぬことを意味する。他国に防衛を任せて平和を叫ぶ似非平和主義では、やって行けない時期が到来していることを明確に認識して、我が国の独立と安全と尊厳を保つ方策に、世界に唯一つ残る戦後体制からの脱却と言う課題と並行して取り組まなければならない。