科学的とは?

夕刊フジBLOGに『アトピー性皮膚炎は「和食」で治る』と言う記事が載った。この報道は患者にとって朗報であるばかりでなく、和食の優秀さを改めて認識させる。戦後、和食は栄養に乏しいと散々貶され、洋食が優れていると持て囃された。ところが近年に至り、和食は健康食として欧米で人気を得ている。戦後和食が劣ると言う見解も、栄養学などに基づくもので、単に洋風に阿たわけではないだろう。それから60年を経て大いに進歩した今の科学では、和食が優れていると説くが、これも国粋主義に基づくとは誰も言わない。どちらも科学的見解であるが、言うことは正反対である。
この事例は科学的とはどういうことか、大きな教訓を示しているように思う。科学を盲信するなと言うのは容易いが、そんなしたり顔して済む問題ではない。科学の結論と言うものは、それが成立するための前提条件がある。例えば「三角形の内閣の和は180度」という定理は、平面においてのみ成り立ち、球面では成立しない。つまり、成立する範囲は限定されており、無制限に成り立つものではないということを、しっかりと認識することが必要である。
和食が優れているか劣悪な食事であるのか、無条件で成り立つ絶対的な結論は存在しない。或る条件下では優れていても、別の条件下では反対になることも有り得るのである。
前提となる条件を正確に把握することは科学だけでなく、日常のあらゆる問題を考える場合にも必要なことである。何かについて議論する場合にも前提条件を先ず確認しなければならない。これを忘れて何かを無条件に信用しては、それこそ盲信となってしまう。一方、科学に携わる者も、絶対的に正しいかのように説くのは誤りで、成立条件、適用範囲を明らかにする態度が大切であろう。