安保理における米英仏と中露のバーター取引

北朝鮮経済制裁決議案の取り扱いに関するせめぎ合いは、中露が議長声明案支持から一転して経済制裁抜きの非難決議案を提案したことにより、若干の修正はあるかも知れないが、非難決議案が採択される見通しとなった。経済制裁決議案の共同提案国である仏・英が二段階方式を持ち出し、中・露は議長声明支持から非難決議案に転換することで歩み寄る形を作り、米・英・仏がそれを評価すると言う流れで、経済制裁は蚊帳の外に放り出されてしまった。
この流れで最も肝腎な経済制裁が消えた裏には、米・英・仏と中・露の間でバーター取引があったらしい。イランのウラン濃縮関連活動停止を求める決議案採択を中・露が飲む代わりに、中・露が嫌がる北朝鮮に対する経済制裁を引っ込める。その結果一番点数を稼いだのは欧米であり、対する中・露はメンツを保った。日本は強硬外交が米英仏の中東戦略のダシに使われたという印象もあり、評価は難しい。肝腎な経済制裁が消えてしまったのは減点だが、安保理での決議を実現する端緒を作った点は評価すべきだろう。今回の件の本質は日中外交戦争だと言う指摘もあり、中国が北朝鮮非難決議案を出さねばならぬ状況に追い込んだと見るなら、良く粘ったと言うべきかも知れない。
今一つ、東シベリアを経由して日本に原油を供給する新規エネルギープロジェクトについて、15日に開幕する主要国首脳会議(サミット)の夕食会に先駆けて行われる小泉純一郎首相とプーチン・ロシア大統領の会談で建設推進で合意に達する見通しとのこと(ここ)。今回のサミットは、本来はエネルギー安全保障を主要議題に置いた内容だったが、北朝鮮のミサイル問題が焦点に浮上したことで、日露間のエネルギー問題も宙に浮く可能性があった。ただ、サミット議長国としてロシアは、世界的に資源供給が逼迫する中で、世界市場に向けて原油供給姿勢があることをアピールする狙いがあり、これまで接点がなかった日本政府との交渉入りが有効と判断したもようだと言う。この件が日本とロシアのバーター取引と見る向きもあるらしい。北朝鮮のミサイル発射により本件の交渉が促進されたのなら、安保理を舞台にした外交の成果と見るべきであろうが、今は何とも言えない。それにしても外交とは全く奇奇怪怪である。