古墳が持つ自浄作用

古墳を開けた直後の壁画は非常に綺麗だったのが、開けて暫くするとカビが繁殖し、壁画は見る見る痛んで来る。高松塚、キトラ古墳など、埋葬から先年もの間は何故カビの害がなかったのか。東京文化財研究所の名誉研究員の新井英夫さんの興味深い話が、19日の愛媛新聞に載っていた。
この謎を解くべく、未発掘墓の埋葬環境を調べたところ、中の空気には外気には無い分子量の物質があることを、物理の分析を担当した見城敏子さんが発見し、アミンの可能性があると指摘した。遺体が腐敗し、蛋白質が分解されてアミノ酸が出来、それが更に分解されてアミンが出来る。見城さんが見つけた分子量のアミンを集めて実験したら、ホルマリンなど殺菌剤の百分の一ほどの低濃度でカビの繁殖が止まった。古墳の持つ自浄作用の発見である。
国際シンポジウムで発表したら凄い反響だったが、日本では余り評価されなかったと言う。これを実用化するには、アミンが壁画に及ぼす影響を調べるなど実験が必要で、後の人たちがやって呉れると思っていたが、ストップしてしまったそうだ。またかとがっくり来る。地味だが非常に重要なこと、強力に推進するのが本当だろう。