企業も経営哲学を喪失

派遣社員の側を批判するだけでは片手落ちなので、企業の側にも文句を言いたい。仕事量の一時的な増大に対処するため派遣社員を使わざるを得ない場合があることは判る。しかし、恒常的に派遣社員を抱えるのは、自社の利益を優先し、派遣社員を仕事量の変動に対処するための緩衝として使っていると言うべきであろう。派遣社員の割合が30%に達する会社もあるらしい。かっての日本企業は良くも悪くも運命共同体であった。松下幸之助は、一旦松下が雇用した人員は絶対に、何があろうとも解雇しないという哲学を持っていた。今のご時勢でこの哲学を貫けるかどうか知らないが、多くの経営者にどんなに苦しくとも従業員を解雇しないと言う姿勢があったのは事実である。大勢の派遣社員を恒常的に抱えている現状は、このような経営哲学が失われたことを示すものであろう。
更に、トヨタの看板方式と喧伝されるジャスト・イン・タイムの部材供給システムは、在庫負担を外注先や下請け企業に押し付けるもので、誠に身勝手と言うほかない。日本は戦後の苦しい時代にも、外注先や下請けとも協力して共に発展することを目指した。現在のトヨタにはそのような精神は微塵も感じられないと言ったら過言であろうか。、