日本人の美意識

渡部亮次郎 のメルマガ「頂門の一針」1475号に、日本の美意識に触れた「日本の時代がやって来る」と題する一文が載っていた。その一部を引用する。

日本ほど世界のなかで、美意識が発達している国はない。
日本は19世紀後半から、ヨーロッパ美術界に深奥な影響を及ぼした。ジャポニスムとして知られるが、ルノワールピサロロートレックドガ、モネ、ゴッホゴーギャンロダンムンクなど、おびただしい数にのぼる作家を魅了した。
これらの作品には、それまでの西洋にとって衝撃的で、斬新だった浮世絵版画の構図を、そのまま用いたものが多い。浮世絵版画によって触発されて、西洋美術が変わった。
ジャポニスムの波は、陶磁器から、皿、カップなどのテーブルウェア、工芸品、服飾、壁紙などの室内装飾、造園までを洗った。
日本は20世紀に入ると、近代建築に大きな影響を及ぼした。ブルーノ・タウト1880年〜1938年)が伊勢神宮の内宮を訪れて、外容と内容が完全に一致しているのに驚いて、「稲妻に打たれたような衝撃をうけた」と記したことは、日本でもよく知られている。
それまでの西洋建築といえば、外装(ファサード)がまるでデコレーションケーキのように、飾りたてられていた。20世紀に入ると、外容と内容が一致した、鉄筋とガラスを用いた機能的なビルが生まれるようになった。
日本の強い影響を受けた建築家として、チェコスロバキア出身のアドルフ・ルーズ(1870年〜1933年)と、オーストリアに生まれ、アメリカで活躍したリチャード・ジョセフ・ノイトラ(1892年〜1970年)も、有名である。
ノイトラは来日して、桂離宮などの建築を訪れて、「私の空間の処理と自然に対する感性と、完全に一致した。私は生涯求めたものに、出合った」と嘆じた。
タウトは著書のなかで、「ヨーロッパへの日本の影響は甚大だった。今日の近代建築が世に出たころ、ヨーロッパの建築に最も強い推進力を加えたのは、大きな窓や戸棚を持ち、純粋な構成を有する、簡素で自由を極めた日本住宅だった」と、述べている。
虚飾を省いた機能的な西洋家具も、日本の影響を強く受けている。日本は近代世界の美の師となった。
(以下なお続く)

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工業製品でも検討を尽くして余分なものを除き、ムダ、ムリ、ムラを無くして行くと、洗練された美しいものに仕上がる。だが、日本の、日本人の美意識を子々孫々に伝え、より深化させて行けるか。心すべきことである。