自動車の将来像は?

自動車の将来は電機自動車か、燃料電池車か、或いは水素自動車か。どこに落ち着くのか、今大きな転換期に来ているのは、素人目にも明らかである。
電気自動車やハイブリッドカーの鍵は電池が握っていて、その主役はリチウムイオン二次電池で、日本が先行し、アメリカは遅れていると言う。そのレースを兎と亀に譬えるなら、日本は兎だが、情報を共有するシステムは無く、調整役もない。対するアメリカは亀で出遅れているが オバマ大統領が就任前の2008年12月「2015年までに北米でPHEV(プラグインハイブリッド車)を100万台走らせる」という目標値を設定したのに始まり、2009年2月には次世代バッテリー(二次電池)関連の技術開発として20億ドル(1ドル100円換算で2000億円)の予算をあっさり承認してしまうなど、強力なリーダーシップの下、官民学が一丸となって「次世代自動車技術の大ドンデン返し作戦」を繰り広げようとしている。こうした政府の強気の姿勢でアメリカはあっという間に「一枚岩」になってしまった。現在実質的には政府管理下にあるGMとクライスラーは当然、エネルギ省(DOE)の基本路線に乗る。「漁夫の利」を狙うフォードは、独自路線とDOE路線をうまく使い分ける。そして、リチウムイオン二次電池メーカー(ほとんどがベンチャー)は、日本、韓国から蓄電池技術者を買い漁り、DOEと投資マネーを後ろ盾に猛進し始めた。敗北者と新参者を米政府がまとめ上げ、将来の方向性を強力に演出し、今や出遅れた亀はひたすら進撃を始めたと言う。
このような状況では、日本はまたまた世界標準化に遅れを取る惧れが大きい。そもそもアメリカと言う国は、各自がそれぞれ好きなことをやって今まで世界トップの地位を保って来た。それが一枚岩になって共通目標を目指した時の底力は凄いものがある。今やリチウムイオン二次電池は研究段階から一挙に事業化の段階に突入したと見るべきであろう。そのような場合、アメリカや欧州諸国は自国の方式を世界標準とすべく全力を注入する。日本も遅れを取ってはならないが、纏め役が居ないと難しい。
かくして将来の自動車は先ず電気自動車への道を走り出したようだが、これが究極の姿かどうかはまだ判らない。その先は燃料電池自動車になるのか、或いは水素自動車になるのか、はたまたそれらが並存することになるのか。いずれにせよ、自動車、電池、関連産業の各社は腹を括って対応せねばなるまい。自動車の脱石油化レースがスタートしたが、次ぎは火力発電所の脱石油化が課題である。電気自動車が単に自動車のみの脱石油化で終わる筈はなく、世界規模での脱石油の観点から最終的な判定が下ると思う。電気自動車の普及には、発電能力の増大と電力供給システムが必要である。先進国はともかく、アフリカなど後進国にとっては大きな負担となる。水素自動車や燃料電池自動車は発電能力の増強を必要としない。これらの長所・短所も自動車の将来像に大きく関係するのではなかろうか。どの形に落ち着くかはまだ判らないが、エネルギ革命が始まったことは間違いない。
【参考】
日本の電気自動車コア技術が流出する!?アメリカで始まった電池バブルの凄み
間違いだらけの“電気自動車”報道! トヨタとホンダが本格参入しない本当の理由
電気自動車の“水戸黄門”が明言!「リチウムイオン二次電池は、2012年にブレイクする」
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