戦後の漢字の変遷

どうも戦後の漢字の変遷を皆さんご存知ないらしい。豫と予は本来別字だが、戦後当用漢字で予を豫の略字体と定め、豫に代えて予を使うようになったことから、伊豫を伊予と書くようになった。この件に関連してデジタル大辞泉に面白い解説が載っている。

よ【予〔豫〕】
[音]ヨ(呉)(漢) [訓]あらかじめ かねて われ
[学習漢字]3年
1 あらかじめ。前もって。「予価・予感・予言・予告・予算・予選・予想・予測・予断・予知・予定・予備・予防・予約」
2 心がゆったりする。心地よくなる。「不予」
3 ぐずぐずする。「猶予」
4 伊予(いよ)国。「予讚・予州」
5 われ。自分。「予輩」
◆本来1〜4は「豫」、5は「予」で別字。
[名のり]たのし・まさ・やす・やすし

つまり、1〜4は本来は豫の字義であるが、予を豫に代えて使うようにしたので、今は予と豫に共通の字義となっているが、5番目は予本来の字義であり、豫とは無関係との意味である。本来は別字である文字「予」を「豫」の略字体と定めたために生じた奇妙な現象である。
どうもこの経緯を皆さんご存知なく、昔から伊豫と伊予とも書いていたと勘違いしているらしい。豫と予は本来別字であることを知らないため、古代中国の豫州を予州と書くのは間違いと言うことが判らないのだろう。この分では将来色々と混乱を生じるのが目に見えるようだ。
【追記】
漢字源の解説を追記する。
【予】 
4画 亅部 [三年]
区点=4529 16進=4D3D シフトJIS=975C
【予】旧字(A) 旧字(A)
4画 亅部
区点=4529 16進=4D3D シフトJIS=975C
【豫】旧字(B) 旧字(B)
16画 豕部
区点=4814 16進=502E シフトJIS=98AC
《常用音訓》ヨ
《音読み》 (A)ヨ  〈y ・y 〉/(B)ヨ  〈y 〉
《訓読み》 あたえる(あたふ)/われ/あらかじめ/あずかる(あづかる)/あずける(あづ
く)
《名付け》 たのし・まさ・やす・やすし
《意味》
(A)【予】 {動}あたえる(アタフ)。面前のものを他人の前まで押しやってあたえる。「賜予シヨ」
 {代}われ。一人称の代名詞。▽平声に読む。〈同義語〉 余。「予不得已也=予已ムコトヲ得ザルナリ」〔 孟子
(B)【豫】 {動・形}のんびりとゆとりをとる。うちとける。また、そのさま。▽猶予の
予。「逸予」
 {副}あらかじめ。ゆとりを置いて。前もって。▽予定の予。〈同義語〉 預。「予備」
 {動}あずかる(アヅカル)。あずける(アヅク)。物をあたえて持たせておく。▽付与の与に当てた用法。「予託」
 {名}昔の中国の九州の一つ。今の河南省。風土がのんびりと広いことからの命名
 {名}周易の六十四卦カの一つ。坤下震上コンカシンショウ。
《解字》 
(A)【予】象形。まるい輪をずらせて向こうへ押しやるさまを描いたもので、押しやる、伸ばす、のびやかなどの意を含む。杼ジョ(横糸を押しやる織機の杼ヒ)の原字と考えてもよい。豫・預・野ヤ(広く伸びた原や畑)・舒ジョ(伸ばす)抒ジョ(伸ばす)などの音符となる。代名詞に
当てたのは仮借カシャである。(B)【豫】会意兼形声。「象(動物のぞう→のんびりしたものの代表)+音符予ヨ」で、のんびりとゆとりをもつこと。
《類義》
 給