今年はコロナ騒動で桜を見損なった

 先週の末頃だったと思うが、道後公園湯築城跡)の染井吉野も、西法寺の薄墨桜も満開と愛媛のニュースで報じて居たが、コロナ騒動でどちらも見損なってしまった。この両者が同時に満開と言うのは松山に来て初めてのことで、非常に珍しい。通常は染井吉野が散った後に西法寺の薄墨桜が満開になり、両者を同時に見ることは出来ない。今年はその有り得ないことが起きた。気象が如何に不順であるかを物語る現象である。

 松山市染井吉野の標本木は道後公園即ち湯築城跡にあり、その湯築城は中世伊豫の守護河野氏の本城であった。薄墨桜の西法寺もその河野氏と縁のある寺である。西法寺は今は勝岡山の麓に在るが、元は勝岡山の頂上の勝岡城の下に在ったと聞く。歴史は古く、1300年の伝統を持つ。勝岡城は芸予諸島から高縄山を経て湯築城へ至る河野氏の狼煙連絡網の拠点の一つであったらしい。

 薄墨桜の名の付く桜は全国に何本か有るが、この名は通称であって、皆品種を異にする。西法寺の薄墨桜は独自の品種であって、ここにしか存在しない。学名を「イヨウスズミ」と言う。初代は800年の長寿を保ち、二代目も400年を越したが、平成6年の松山の大渇水に遭い枯れてしまった。惜しいことをしたものだ。その時近くにある愛媛県農林水産研究所で苗を育てていたので、種を絶やすことなく繋ぐことが出来た。現在は接ぎ木やバイオで新しい苗を育て、数を増やしている。花は16弁前後の八重桜で、非常に綺麗である。現存する樹はまだ若いが、初代を描いた絵や二代目の写真から見て、年を経れば見事な容姿を見せて呉れるものと思われる。

 西法寺には薄墨桜と染井吉野との自然交配種である「西法寺櫻」、薄墨桜と大島桜との自然交配種「新西法寺櫻」が有り、この三種類は世界中で西法寺にしか存在しない貴重な桜である。

 最後に西法寺の公式サイトを記しておく。

薄墨桜西芳寺https://saiho-ji.or.jp/