大河ドラマ「義経」第三話に対する批判

義経大辞典で編者の佐藤弘弥氏が大河ドラマ義経」第三話に厳しい批判を加えている。即ち、義経鞍馬山時代は彼の人格形成の時期であり、その人格形成の過程をきちんと描くべきだと言う。その通りである。佐藤氏は、「義経の周囲の人物がどう考えても優しすぎる。一人っ子時代を反映した甘やかしのストーリーということなのだろうか。義経の実際の人生は、もっともっと厳しかったはずである。だからこそその逆境に負けないように何事もにも、主体的に取り組む義経という人物が出来上がったのである。」と述べているが、全く同感である。最後に、「第三話は、己の出自を知り、劇的に変化する義経でなければならなかった。要するに第三話のテーマは、己の出自との出会いからくる天才の目覚めでなければならなかったはずだ。それによって、義経の目は劇的に尖んがるのである。」と結んでいるが、ここらに佐藤氏と宮尾登美子との人間理解の目や姿勢の違いを強く感じる。
NHKの大河ドラマはマザコン物語が多すぎる。人間は厳しさを乗り越えて初めて一人前になって行く。昨晩NHKのプロジェクトⅩで富山県警山岳救助隊創設時の模様を放映していたが、命を賭けた救助活動を成し遂げて成長して行く隊員達の姿を描き出していた。それに対して大河ドラマの甘っちょろさは目を覆いたくなる。このように核心を衝いた描写が見られないようでは、福原合戦も屋島合戦も的を外した描き方になるだろう。