スイスの永世中立(2)ドイツ軍に断固抵抗

前大戦の時だったと思うが、或る時ドイツ軍が友邦イタリヤに行くためスイス領内を通過しようとした。ドイツ軍の進路前方に橋があり、その橋に近づいたときスイスは軍隊だったか担当係官だったかを(どちらだったか聞き漏らした)、その橋を渡ってドイツ軍の前に派遣した。そしてドイツ軍に引き返すよう求め、もしこれ以上一歩でも前進したら橋を爆破すると通告した。橋を落とせば派遣されたスイス人は犠牲になるが、それも止むを得ないと断固たる意志表示を行った。その毅然とした態度にドイツ軍も通過を諦め引き返したと言う。
もしドイツがスイスの要求を拒んで戦争になったら、国力から見てスイスは勝てないであろう。だが国の存亡を賭けてまで自国の理念を貫こうとするスイスにごり押しして、世界中の批判を浴びることをドイツは恐れたのであろうか。スイスの毅然たる態度が国を救った。
日本も不戦を貫くならスイスに学ばねばならない。スイスは非武装都市宣言など見向きもしない。ドイツ軍が通過しようとしたとき、非武装都市宣言をしていたら危険をお冒さずに済んだかも知れない。しかしドイツ軍は無事通過したら、スイスの永世中立は空手形となって世界中の信頼を失い、スイスの存立基盤は崩れ去る。スイスが目先の安全を求めて柔な態度を取っていたら、その先に亡国の危機が待っていたかも知れない。
スイスはこれだけでなく、越境して来たドイツ軍の飛行機を撃墜したこともあると言う。永世中立を守るには、このように国の存亡をも賭した命懸けの行動を必要とするのである。日本も不戦を貫くには、毅然とした態度と断固たる意志を示さねばならぬ。