スイスの永世中立(1)国民皆兵

過日の旅行で聞いた話。忘れぬうちに記録しておく。
スイスは国是として永世中立を守っている。そのための努力は尋常なものではない。スイスは、反戦を叫べば平和が保たれるとか、憲法戦争放棄を謳えば戦争にならないなどと言う観念論は取らない。もっと現実的であり、永世中立を侵す者があれば断固たる処置を取る覚悟である。それを可能にするため国民皆兵制度を取っている。
その国民皆兵の内容は日本では殆ど知られていないのではなかろうか。スイスでは或る年齢に達すると、軍事訓練を受ける。そして除隊する時、銃を家に持って帰り、いざというときはその銃を持って集まると言う。これではスイスと言う国はハリネズミではないか。この話を聞いた時は驚き、感心した。
スイスはもともと武勇に優れた国だという。アルプスに抱えられた高地であり、耕せる土地は少ない。養える人口は決して多くはない。そこでよその国に傭兵として出て行ったが、そこでの評価を落とすと自分だけでなく、スイス全体が食えなくなる、そのような事情からスイス出身の兵は信頼を得るため忠誠心厚く懸命に励んだので、ローマ法王もスイス人の護衛を一番信頼していたと言う。
このように厳しく身を律する伝統があればこそ、銃を家庭に置くというようなことが可能なのであろう。