亜熱帯の森林は地球を温暖化するのか?

 「国際派時事コラム・商社マンに技あり!」 ライブ版」に気になる記事があった。「植林すると地球温暖化につながるパラドックス」と題して、『ニューヨークタイムズ紙1月16日号にWhen Being Greem Raises the Heat.(緑化でますます気温が上がる)という記事を紹介している。
 同紙の記事は、「人工衛星から見ると亜熱帯の森林地帯は黒く見える。これは太陽熱を吸収していることを示す。熱帯地方の森林は地中の水分を吸い上げて蒸散させる量がハンパじゃなくて、森林があることによって大気中の水蒸気量が増えて雲ができやすくなり、太陽光を遮ってくれるので、温暖化防止に役立つ」と述べているそうだ。
 だがこれは少々おかしいと思う。随分前のことだが、先ず神戸市が、つづいて東京都が、樹木の多い地帯とアスファルトジャングル地帯の温度差を調べたことがある。神戸市の場合、2つの地帯の温度差は9度以上あったが、高低さなどによる差を総て差し引いた残りが、6度以上となった。東京都はその1年か2年後に同じ調査を行い、7度弱の差があるとした。両者の数値には僅かな違いはあるが、その差は小さく、ほぼ一致した結論と見て良い。
 緑の多い地帯とアスファルトジャングル地帯で、このような大きな温度差が出るのは、後者ではアスファルトやコンクリートが熱を吸収し蓄積するのに対し、樹木の多い地帯では水蒸気を大量に放散し、その際に気化熱を奪うためである。
 ニューヨークタイムズ紙はこの効果を無視しているのではなかろうか。亜熱帯と言えども森林は太陽光を吸収し蓄積するだけでなく、そのエネルギを光合成や水蒸気の放散に費やしている。従って同紙が言うように吸収し蓄熱するから温暖化すると言うのは、一面だけを見た誤認識と言うべきではなかろうか。