稀に見る熱戦を制しフェデラー優勝

凄い試合だった。テニス史に残る名勝負と言って良いだろう。
この大会、フェデラーは絶好調とは言い難く、突如崩れることがあった。この試合でも第二セットの第九ゲーム(だったと思う)に、急に乱れてミスを連発し、ブレイクされてしまった。この乱れが命取りになって第二セットを落とした。サーブではフェデラーが上回るが、ストローク戦はナダルの方が強く、フェデラーナダルの体勢を崩すことができなかった。普通ならフェデラーの深い打球に詰まって返球が甘くなるところを、ナダルは体勢を崩さずにきっちりと打ち返し、時にはそれがWinnerとなってしまう。フェデラーは第一・第三セットをタイブレイクで取ったが、ナダルは芝の王者を向こうに廻して一歩も退かず、ブレイクの数では上回り、第二・第四セットを奪った。特に第四セットはフェデラーの僅かな乱れに乗じ一気に追い詰めて6−2で制し、第一〜第三セットの拮抗した展開から一転、形勢はナダルに傾いたかと思われた。
最終セットに入ってもナダルの勢いは続き、フェデラーサービスゲームの第三・第五ゲームとも15−40と追い詰めた。しかしフェデラーはブレイクポイントを握られながら、サービス・エースを連発してゲームをキープし、踏みとどまった。振り返って見ればここが勝負の分かれ道だった。もしもナダルがどちらかをブレイクしていれば、それまでフェデラーは殆どナダルのサービスをブレイク出来ていなかった状況から見て、ナダルが勝利した可能性は非常に高い。
ピンチを切り抜けたフェデラーはここが勝負どころと思ったのだろう。角度をつけたパッシング・ショットやダウンザラインのショットなど、乾坤一擲の勝負球を連続決めてナダルサービスゲームを連取し、勝利をもぎ取ってしまった。
それまではなかなか決まらなかった勝負球を、土壇場で際どく決めたこと、ブレイクポイントを握られながらエースを連発したこと、いずれもフェデラーの精神力の凄さを物語るもので、驚嘆に値する。ボルグに並ぶウィンブルドン五連覇の偉業に拍手。一方ナダルも芝の王者に正面から対抗し、勝負に敗れはしたが、途中は互角以上に戦ってフェデラーを今一歩の所まで追い詰めたのは、彼の成長振りを示すもの。大きな拍手を送りたい。ナダルが優勝する日は遠くない。