「世界から見た福島事故」を見て思うこと

昨夜NHKのBS1で「世界から見た福島事故」を見た。これを見ると我が国の原発が全くと言って良い程いい加減であったことに衝撃を受けた。感銘を受けたのはスイスの原発事故対策である。
スイスも福島と同じ型の原発を造った。造るとき既に全交流電源喪失と言う事態は起こり得るとし、その事態が起きた場合には圧力容器が小さいことから生じる爆発の危険性があるが、それへの対処法として圧力容器を大きくするのはもう不可能なので、それなら建屋を頑丈にして補おうと考え実行した。更に全交流電源喪失と言う事態への対策を幾つも講じている。その第一が水素ガスのベント装置である。これを必要とするのは最悪の事態の下であるからとして、電気無しで操作可能なシステムを造り上げた。これが福島のベントシステムと根本的に違う。第二に排出される水素ガスには放射性物質が含まれている。それを取り除くためにプールを設け、更にベントする際には或る薬品をプールに投入し、そこを通して水素を排出するようにした。これで放出される放射性物質は千分の一に抑えることが出来ると言う。第三に全電源が喪失状態になったときの対処法を訓練するために、原発の制御室と全く同じものを造り、そこで様々な訓練を行っていると言う。もう一つ、圧力容器の傍に非常用電源装置が置かれていたが、それで6時間冷却水の注入が可能だそうだ。
福島にはこれらは何一つ無かった。スイスの技術者は、日本は地震国、津波国なのにその備えが無かったことに驚いていた。そして、安全は自分らで確保しなければならないと語っていた。これを聞いた時、イザヤ・ベンダサンを思い出した。
スイスは事故対策をすることによって安全度を100%に近づけることは出来るが、完全に100%安全を実現するのは不可能であるとして、原発の廃止を決めたと言う。これは正しいと思う。翻って我が国はどうか。保安院四国電力が行った伊方原発のストレステストの評価を妥当と判断したと報じられている。では伊方原発にスイスが施した事故対策が一つでも追加されただろうか。否。スイスは我が国より格段に優れた対策を行いながらなおかつ絶対安全ではないと原発廃止を決めた。ものの考え方、態度にどうしてこれ程までの差が生じるのだろうか。スイスは永世中立を守るためにどうすべきかをとことん考え、実行して来た国である。何事も曖昧にせずとことん考え抜き、正面からぶつかって行く。原発に対してもその態度が貫かれている。今我が国に必要なのはこれではなかろうか。