忠臣蔵か狼藉蔵か

田母神さんが大東亜戦争の勃発に関して、実に的確な指摘をしている(ココ)。
毎年12月になると忠臣蔵が放映される。この忠臣蔵の松の廊下刃傷事件や浅野内匠頭切腹に始まる前半を省略し、12月14日の赤穂浪士の吉良邸討ち入りから始めたら、赤穂浪士の狼藉物語となり、忠臣蔵でなく狼藉蔵になってしまう。大東亜戦争真珠湾攻撃に至る歴史を覆い隠しているので、日本が理不尽にもいきなり真珠湾攻撃を行ったように思われている。まさに狼藉蔵になってしまっている。
70年安倍談話では欧米列強の植民地支配と経済のブロック化に触れている。戦後の歴代内閣の誰も触れたことはなく、この点に触れたのは安倍首相が始めてである。文章の調子としてはきついものではなく、欧米列強を非難する文言ではなく、それこそさりげなく触れたという書き方だが、言いたいことは真珠湾攻撃にはそれに至る経過があるのだよと言うことであろう。
開戦に至る経過については政治力学上まだ大きな声では言えない段階だが、研究者や一部識者の間では既に明らかになっていると言ってよいであろう。米国政治家でも例えばかっての共和党党首のハミルトン・フィッシュは、ルーズベルトが日本にハル・ノートを突き付けていたことを隠していたと知って激怒し、ルーズベルトを強烈に批判している(例えばココ)。
そのハル・ノートはハル国務長官の案ではなく、ソ連のスパイであったハリー・デクスター・ホワイトが作成した案で、ルーズベルト大統領が日本が絶対に飲めないものと言う見地から採用し、ハル国務長官の名で日本に突き付けたものであった。ハル国見長官はこんなものを出したら戦争になるのではないかと心配したそうだが、ルーズベルト大統領の狙いは日本を戦争に踏み切らせることで、その目的は見事に達成され、アメリカ国内の空気を戦争に転換することに成功した。
アメリカは日本を経済封鎖してはいたが、ハル・ノートは秘密にされていたため、日本が突如真珠湾を攻撃した格好にされてしまった。もしハル・ノートを突き付けたことが明らかにされていたら、共和党は対日戦争に賛成しなかったのではなかろうか。先日ふと思ったのだが、あの時日本がもしもハル・ノートを世界に公表したら、米国内の空気がどうなっていただろうか。アメリカがハル・ノートを突き付けたことを極秘にしていたとは夢にも思わず、アメリカの意志と受け取ってしまったのだろう。
安倍談話で経済のブロック化に触れたのは、真珠湾攻撃に至る前に色々な経過が有り、論じるべきことは沢山有ることを指摘することが目的ではないかと感じた。本当はもっと明確かつ詳しく論じるべきだが、単に匂わすだけに留めたのは、今はまだ時期尚早との判断だったのであろう。
歴史を正す日が一日も早く来ることを祈る。