ウルフ逝く

小さな大横綱千代の富士が亡くなった。ご冥福を祈る。
千代の富士のことは何故か色々と記憶している。若い頃は脱臼に悩まされ、筋力を鍛えることによって脱臼を防止し、これがその後の飛躍に繋がったこと、体脂肪率が非常に低く、筋肉量では体重200kgの小錦と同等だったこと、などなど。
取り口で一番印象に残っているのは、相手の動きが完全に見えていると思える一連の動きである。例えば、がっぷり四つに組んでいて、相手が出ようとした瞬間、千代の富士は体を開いて上手投げ。千代の富士の動きは相手の出ようとする動きを、さあどうぞと手助けしてやるかに見えた。兎に角相手の動きが丸見えで、そのため相手にとっては何をやっても自分の動き、自分の力を利用されてしまうと言う感じだった。
パリ巡業も面白かった。千代の富士は総ての取り組みを相手十分に組ませてから、おもむろに倒すと言う取り口に終始した。相手力士がどこまでやれるのかを試しているように見えた。決勝戦の対北勝海戦は相手十分では堪え切れず敗れたが、千代の富士と他の力士の間にはこんなに力の差が有ったのかとびっくりしたことを覚えている。
朝青龍千代の富士横綱たちの横綱と言ったらしいが、全くその通りだと思う。