日本語入力に適したキーボード(その6)

やがてOASYSソフトがPCに移植され、富士通のPCでOASYS親指シフトキーボードも使えるようになりました。それ以後は専らPCでOASYSを使っていました。親指シフトキーボードを使えば、下から2段目と中央の2列だけで大部分の言葉を入力できます。その比率は忘れましたが、確か70%前後ではなかったでしょうか。打鍵頻度の高いキーは近くに纏められていますので、指があちこちに跳ぶことが少なく、手をホームポジションに置いたまま打てるのです。大変楽でした。JIS配列キーボードでは4段全部を使い、打鍵頻度に無関係にキーが配置されているので、指があちこち跳び廻ることになり、実用性は最低です。ワープロが出始めた頃、或る速記会社が導入しようとして調査したのですが、実用になったのはOASYSだけだったと何かで読みました。当然の結論だと思いました。
日本語入力には圧倒的に優れていましたので、各メーカーが採用し、JIS化して欲しかったのですが、採用したのはソニーだけでしたし、ソフトハウスの中にもジャストシステムなど、親指シフトには対応しないとはっきり書いている所もあったくらいです。そのため親指シフトのJIS化は遂に実現しませんでした。この事実はユーザーの利益を省みないメーカー同士の足の引っ張り合いのせいだと言うしかありません。
一方富士通も腰が定まらず、特にDOS/Vが出現した際、PCは他に先駆けてDOS/V機に切り替えながら、親指シフトキーボードのサポートを続けるのかどうか、口を濁した時期がありました。2年くらい続いたと思います。アマチュアDOS/Vのキーボードを親指シフト化するソフトを幾つか発表していましたが、メーカー自身がサポートしなければ、常に不安感が付き纏います。私はPCをDOS/V機に切り換えた後も暫く様子を見ていましたが、富士通の態度が明確にならないので、泣く泣く親指シフトを諦めました。歳のせいもありますが、現在の入力速度は一番速かった時期の半分以下、三分の一かそれ以下でしょう。今でも親指シフトキーボードとOASYS辞書の使い良さが忘れられません。
日本人が日本語の感覚で日本語を打てるキーボード、これがあるべき姿のはずです。かってコンピュータで日本語を扱うのは不可能と言われた時代に、コンピュータで自分の国の言葉を扱えないのはおかしいと、敢然と日本語処理に取り組み、OASYSを開発した神田氏の信念と心意気に学び、かつ、アルパカさんのコメントの次の言葉、

コスト削減の標的になり、打鍵そのもののが楽しくなるようなキーボードが減り、安っぽいキータッチの、使えれば良いだろう程度の品しか無くなったのは残念です。
パーソナルコンピューターなのですから、徹底してパーソナルが使い易くなければ嘘だろうと思う次第です。

を、富士通始め各メーカーはしっかりと噛み締め、日本語キーボードの開発にもう一度挑戦して欲しいと念願して、本稿を終わります。