お見事伊達公子

伊達公子は全仏で傷めた脚が完治していなかったのか、第2セット3−1とリードしたあたりと思われるが、脚に痙攣を起こし、それ以後完全に失速して逆転負けした。しかし、それまでの試合振りは見事の一語に尽きる。
第1セットをタイブレークで取り、第2セットも3−1とリードするまでは、体格でも球速でも若さでも勝る相手の得意を完全に封じ込んでしまった。球を左右のコーナー一杯に、或いはエンドラインやサイドラインぎりぎりに打って、相手が十分に構える余裕を与えず、或いはスライスで緩急をつけて相手をリズムに乗せず、返球が甘くなるとそれを予測してネットに詰め、ボレーで決めるなど、ロングラリーに持ち込ませず、早い勝負で世界ランキング9位の相手を翻弄した。
第2セット中頃から動きが逆転し、ラリーが長く続いたり、相手が十分に構えて強打を放つようになってしまったが、伊達は脚の故障で思うように球をコントロール出来なくなったためだろう。逆転負けは残念だが、近年女子もパワーテニス全盛の中にあって、試合前半に見せた相手の得意を封じる技や試合運びは異彩を放ち、流石元世界ランキング4位の選手と感じさせるものだったし、インサイドワークでは彼女の最盛期を上回るものだったかも知れない。若い選手達は、あの小柄な伊達公子が体格で遥かに勝る外国選手に立ち向かう技を是非身に付け、大きくレベルアップして欲しいと思う。