言葉の変遷

戦艦という言葉の意味が変わってしまったらしい。戦艦とは「戦う艦」つまり「戦闘艦」の「闘」を省略した言葉のようだ。昔は戦艦が軍艦の花形だったが、今は戦艦という艦種は造られなくなってしまった。そのため戦艦とは軍艦の一種で艦種を指すとは判らず、文字から戦う艦、即ち戦闘艦のことと勘違いしてしまったのだろう。
そこで広辞苑に何と書いてあるか、調べて見た。結果は想像通りだった。

せん‐かん【戦艦】
1.戦争に用いる船。軍艦。戦闘艦。
2.軍艦の一種。最も卓越した攻撃力と防御力とを有する大型艦で、第二次大戦までは水上兵力の中心。「―大和」
広辞苑第六版より引用)

次に軍艦を調べると、とんでもない書き方をしている。

ぐん‐かん【軍艦】
1.水上の戦闘に従事する艦艇。
2.旧海軍における艦艇の類別の一つ。戦艦・巡洋艦航空母艦潜水母艦海防艦・砲艦などで、駆逐艦・潜水艦・特務艦などとは区別する。
広辞苑第六版より引用)

1.では水上と限定しているが、これでは潜水艦は軍艦でないことになりおかしい。2.では更に酷く、潜水艦だけでなく、駆逐艦も特殊艦も軍艦でないと言う。ではこれらは何なのだと調べてみた。
旧日本軍では軍艦の定義に二種類あり、駆逐艦も潜水艦も、広義の軍艦はすべてを含み、国際法と同じであるが、狭義の軍艦には含まれない。その違いはどうやら艦首に菊花後紋章が付くか付かないかだけらしい。では何故駆逐艦に菊花後紋章が付かないのか。水雷艇など水上艇には菊花後紋章はつけなかった。そこで全くの推測だが、駆逐艦水雷艇から発達したもので、次第に大型化して艇から艦となったが、慣習的に付けないままで終わってしまったのではなかろうか。
これですっきりしたが、戦艦、軍艦について広辞苑は調査不足で、その記述は杜撰に過ぎる。広辞苑も落ちたものだと言う感がする。