「○○して宜しいでしょうか」と言う言い方

市役所の支所で住民票を取った時の窓口の係の言葉、「ご本人であることを確認できるものを見せて頂いて宜しいでしょうか」。答えは良いか悪いかのどちらかしかない。もし「宜しい」と答えたら窓口氏はどうするのだろうか。こちらの鞄を引っ掻き回して探すのか。
どんな時でも「宜しいでしょうか」をつければ丁寧な言い回しとして通用する思うのは、とんでもない勘違いである。「宜しいでしょうか」とは自分がしたい行為に対して事前に許可を求める言葉である。相手に何らかの行動を求める言葉ではない。本人確認が出来るもの、例えば運転免許証が既に出してあるので、それを見て良いかと言う意味で、「拝見して宜しいですか」と言うのなら、これは窓口氏がやりたいことに対する許可を求めるのだから良い。状況や立場を弁えた微妙な言葉遣いが消えて行くのは淋しい。言葉を発する人間の感覚が深みを失い単純化している表れなのだろうか。近年の言葉遣いを聞いていると、感覚とそれを表現する言葉遣いの単細胞化とでも言えそうな、やるせない気分に襲われる。