平成最後の日に当たって思うこと

 いよいよ平成最後の日を迎えた。あと10時間程で令和となる。

 先日トランプ大統領が安倍首相に、天皇の交代は日本にとってそんなに重大なことなのかと問うたらしい。日本の天皇制は諸外国のどの王室とも、かって存在したどの皇帝とも性格の異なる存在であり、外国人には理解出来ないかも知れないと思う。

 日本の天皇とは極く一時期以外は権力とは無縁の存在で、言うなら権威の象徴で、日本では昔から権威と権力が並立し、敢えて表現するなら権・権分立であった。そのため権力の交代も、外国なら易姓革命と言うべき事態でありながら、天皇と言う権威の下での政権交代と言う形で済んでしまい、国は何事も無く続いて来た。

 もしも権威と権力が分立してなくて、時の権力者が権威をも握っていたら、権力の交代の時、どういうことになっていただろうか。古代の藤原氏から平家へ、そして源氏、北条氏、足利氏、更に織田氏豊臣氏を経て徳川氏、そして明治維新と数々の武力による権力の変遷が単なる権力者が交代しただけで、人々の生活も文化もそのまま持続し、従って国も変わることなく永続することが出来たのは、権威が権力と分立していたからであろう。

 諸外国の皇帝や王は権力と同時に権威も握っていたので、武力で倒されると国も滅び、総てが変わってしまう。我が国では武力を持たぬ天皇と言う存在を、どの権力者も潰そうとはせず、天皇と言う権威の下で権力を行使する道を選んだ。つまり権威と権力の分立を古来から皆が是認し、不文律として守って来た。まことに不思議なことであるが、この国家の形態が我が国を二千年も永続させたと言えよう。だから日本にとって天皇は日本を日本たらしめた存在であり、天皇の交代は凄く重要な出来事なのである。もしも天皇と言う武力を持たぬ権威の象徴が存在しなかったら、我が国の二千年の歴史は存在し得なかっただろう。

 現行憲法では天皇を日本の象徴と定義したが、誠に適切な表現と思う。一言付け加えるなら「権威の象徴」と言ってよいのではなかろうか。次の令和時代がより発展した時代となることを願いつつ、平成最後の筆を置く。