最高裁が犯した逸脱行為(続き)

最高裁判決で違憲とされたのは国籍法第三条1項で、これが法の下の平等を定めた憲法第14条1項に違反しているとした。その上で国籍法第三条1項の文言の一部を削除すれば違憲状態は解消するとして、その文言を削除した条文に基づいて判決を下している。これを理解するには先ず条文を見てみよう。

日本国憲法第14条
1. すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

国籍法第三条
1 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で二十歳未満のもの(日本国民であった者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。

憲法第14条1項は法の下に平等と定めているが、この条文の対象範囲はは日本国民、即ち日本国籍を付与された者である。従って日本国籍を有していない者に日本国籍を付与するか否かの判断に適用出来る条文ではない。故に最高裁が国籍法第三条1項が憲法第14条1項に反するとした違憲判断は条文の適用を誤っている。憲法第14条1項の主語に当たる「総ての国民は」が「すべての人は」とするならば、この違憲判断は成立する。最高裁が国籍法第三条1項が憲法第14条1項に照らして違反するとしたのは、条文を勝手に改変したと看做されても仕方ない。
最高裁は更に、違憲と判断した国籍法第三条1項から「婚姻及びその」と「嫡出」の部分を削除すれば違憲状態は解消するとして、その二つの部分を削除した条文を適用して判決を下してしまった。
つまり最高裁違憲と判断した条文の一部を改変して違憲状態を解消し、その改変された条文をそのまま法として適用して判決をくだしたのであって、実質的に司法による立法を行ったことになる。稲田議員が最高裁の判決は「二重の意味で問題がある」とし、「司法権の逸脱である」「裁判所による事実上の立法」がなされたと批判したのはこの点であった。立法・行政・司法の三権分立から逸脱した今回の最高裁の行為は厳しく批判されるべきで、この逸脱行為を犯した裁判官は弾劾されて当然であろう。
最高裁違憲判決にこのような重大問題があったにも拘わらず、その点を国会で何ら追及することなく、違憲状態を解消するとの口実の下、有耶無耶のうちに国籍法を改悪したのは、違憲判決に便乗した売国行為と映る。その主犯は誰か、背後にどんな勢力が蠢くのか。将来が思いやられる。