愛媛新聞が湯築城保存運動の特集記事

 湯築城を守る会の運動が始まって30年になるので、その保存運動の特集記事が、愛媛新聞に掲載された。N記者は良く纏めて呉れたと思うが、しっくりしない所が若干残るのは、取材を受けた時の当方の説明が足りなかったのか、記述が若干甘い所が何点か見受けられるのが口惜しい。
 その一。膠着状態だった保存運動に光が差し込み、決着をつけたのは、平成11年1月の知事選で加戸知事が当選し、就任早々に湯築城跡を保存し、国に史跡指定を申請すると言明したことである。これで行方が判らなかった湯築城跡の運命が明確になり、保存運動に一応の決着が付いた。その前の知事がどう考えていたのか判然としない点があるが、湯築城跡の将来を明確にしたのは加戸知事であったことは間違い無く、就任早々にけりを付けた加戸知事の英断に我々は深く感謝している。記事ではこの点に触れていないのが残念であり、それが取材を受けた時の説明不足によるとしたら、加戸知事に誠に申し訳なく思う。
 第二点は、保存運動が長期間に渡って団結を維持できた理由は何かである。それは我々の運動が政党色を排し、市民運動に徹したことにある。市民運動なので会員の構成は市民構成の縮図であり、社会的立場は上から下まで居り、思想的にも右から左まで多種多様である。当時、史跡・遺跡の保存運動であっても特定政党の支援を受ける例が見られたが、特定政党が支援すると他政党支持者はそっぽを向いてしまい、政治運動化してしまう例があった。湯築城跡を守る会は会の目標を「湯築城跡を守れ」の一点に絞り、政党色を一切排除し、市民運動に徹したことが、最後まで結束を保つことが出来た要因と思う。
 第三に情報発信に重点を置いたことが大きかった。この種の運動で一番大切なのは運動の目的や状況を広く知って貰うことである。だがそれには金が掛かる。例えば松山市全部にチラシをくばろうとすると、それだけで数年分の会費が必要であり、実際には不可能である。そこでマスコミに取り上げられ易い行動を意識的に取ったことと、更に実用化されたばかりのインターネットを活用して、平成10年からインターネットを利用した情報発信に努めたことである。この効果は想像以上に大きかった。インターネットには境界が無く、双方向性、即時性が有る。これを用いて情報を発信すると直ぐに応答があり、しかもそれは多くの都県に跨るので、湯築城跡保存運動は単に愛媛県内の問題では無く、全国から注目されていることが誰の目にも判るようになって来た。そうなるとこの問題は県内で湯築城跡を守る会を抑え込めば済む状況ではなくなり、行政側は大きな圧力を感じたらしい。我々市民運動にとっては武器は言論だけしかない。我々の運動は結果から見てその言論を有効的に使ったと言えるのかも知れない。
 愛媛新聞の特集記事に以上の三点が入って居なかったのが残念だ。取材を受けた時の応答に欠ける所が有ったと反省する。